導入事例
Microsoft Power Platform
導入事例
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本) 様
柔軟な変更が難しかった既存ワークフローシステムを
Power Platformへ移行し、この問題を根本から解決
課題
- 「ATS設置・変更」のワークフローをシステム化していたが、
ワークフローの柔軟な変更が難しかった - 組織改編への対応や新規ワークフローの実装は、
システム改修として予算確保から調整する必要があった - 同様の機能をPower Platformで開発することが検討されたが、
要件が複雑で市民開発では難しそうだった
効果
- 「プロ開発」を採用することで、複雑なシステムの機能をPower Platformで再現できた
- 柔軟性の高いシステムを実現したことで、新規ワークフローの取り込みや変更が容易になった
- 「プロ開発」の成功事例を創ったことで、イノベーションの幅が広がることも期待されている
導入背景と既存システムの課題
現場主導のアプリ開発を積極化
『もっとつながる。未来が動き出す。』という「私たちの志」の実現に向け、これまで以上にお客様視点で「つながりを進化させる」ことを目指している西日本旅客鉄道株式会社 (以下 JR西日本)。グループ全体でイノベーションを生み出す取り組みも推進しており、その一環として「Work Smile Project」という働き方改革プロジェクトも実施している。これは、デジタルツールの活用を通じた組織風土や文化の変革によって、社員のやりがいを高めるとともに、社会に対する新たな価値や変化を高頻度で創出していこうというもの。そのためのツールとして2022年7月からMicrosoft Power Platformの本格活用を開始、現場主導でのアプリ開発が数多く行われている。
その多くは「市民開発」によるものだが、なかには「プロ開発(外部ベンダーが開発を担当)」のものもある。その1つとして2023年7月から開発が進められているのが、「保安装置(ATS)の新設・変更管理のワークフローシステム」だ。
変更が難しかった既存システム
「ATSとは赤信号や曲線などに対して、列車の速度をチェックし、必要に応じて自動的にブレーキを動作させる装置のことです」と説明するのは、鉄道本部 イノベーション本部 保安システム室 新保安システムの泉 惠大氏。その新設や変更の際には、帳票を作成するためのワークフローを定めていると説明する。
「このワークフローをシステム化するため、パッケージをカスタマイズしたシステムを導入し、現在も利用し続けています」と語るのは、鉄道本部 イノベーション本部 保安システム室 保安設備計画の青山 拓弥氏。しかしワークフローの変更や追加を行う際には、その保守を行うグループ会社に変更依頼を行う必要があり、そのたびにコストと時間がかかっていると言う。そのため泉氏は、以下のように指摘する。
「ATS設置の新たな考え方を導入し、ワークフローを変更・追加する場面でも、改修までの間はせっかくのシステムが活用できず、手作業で帳票を作成するなど、作業に手間がかかっていました」
「プロ開発」ベンダーの選定経緯
市民開発では困難だと判断
2022年10月には、これらの問題の解決に向けた検討に着手。すでにWork Smile Projectが始まっていたこともあり、当初はPower Platformを活用した市民開発で新規アプリを開発することが考えられた。
「それまでの経験から、Power Platformなら既存システムを置き換えられそうだと判断しました」と言うのは、鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 DX創造の松宮 寛氏。しかしワークフローの中身が複雑であり、多くの関係者が利用するシステムであるため、市民開発では難しそうだとも感じていたと振り返る。
そこでPower Platformでの開発に実績があるベンダーを、社内で10社程度リストアップ。2022年12月にはこれらのベンダーとやり取りしながら、「プロ開発」の道を模索することになる。「ここでJR西日本から各社にお聞きしたのが、Power Platformでどこまでできるのか、その開発をどこまでお任せできるのか、ということです。また年度末までにある程度の結論を出したいと考えていたため、スケジュール面でもかなり厳しい条件となりました」
複数パターンを提案したシーイーシー
最終的に、プロ開発のパートナーとして選ばれたのがシーイーシーである。その理由を松宮氏は、次のように説明する。
「2023年3月まで一緒に技術検証を行ったのですが、その過程でかなり高い技術力があると感じました。また、こちらが提示した要件に対して細かいところまで突き詰めて考え、複数パターンで提案してくださったことも印象的でした。例えばPower Platformの利用方法についても、モデル駆動型アプリで1パターン、キャンバスアプリで2パターンを提案してくれたのです。このような対応から、開発パートナーとして最適な会社だと判断しました」
2023年6月には正式に契約を行い、その翌月にプロジェクトを正式にスタート。同年12月にはシステムがほぼ完成、その後、試行運用を開始している。
構築システムと導入効果、今後の展望
複数のマイクロソフト製品を連携
今回構築されたシステムの全体像は図に示す通り。Power Platformをはじめとする複数のマイクロソフト製品で、Excel帳票を作成していく、という内容になっている。
「以前のシステムでもExcel帳票を作成していましたが、その機能がきちんと再現されており、非常に満足しています」と泉氏。また細かい権限設定や記入・承認済み帳票へのロックなど、担当者のミス防止機能を装備している点も高く評価していると言う。「ワークフローの追加や変更は、SharePointリストを追加・修正するだけで対応可能。これで新しいワークフローを簡単に取り込めるようになりました」
近い将来にはワークフローのシステム化の範囲を拡大する予定。「これによってATS設置・変更時の帳票作成・管理作業が効率化されるはずです」(青山氏)
難易度の高い開発の「パートナー」に
「今回は標準機能でかなり高度な開発をしていただきました」と言うのは、鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 DX創造の内田 光耶氏。これだけのシステムを市民開発することは、不可能だったはずだと述べる。「多数のSharePointリストとAutomateフロー、Excelマクロを連動させることで、こちらの要望した機能が実現されています。またシステムそのものに目がいきがちですが、プロ開発が残してくれた設計書も、今後自分たちで運用を担っていくうえで必要不可欠なものです」
最後に「Power Platformとプロ開発の組み合わせは、私たちに新たな可能性を示してくれました」と語るのは、鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 DX創造で担当課長を務める森 和彦氏。市民開発とプロ開発を使い分けていくことで、イノベーションの幅も広がるはずだと指摘する。「変革が必要なシステムは、各部門にまだ数多く残っています。その中でも難易度の高いものについては、シーイーシーが強力なパートナーになり得ると考えています」
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)
- 本 社 :
- 〒530-8341 大阪市北区芝田二丁目4番24号
- 代表者 :
- 代表取締役社長 長谷川 一明
- 従業員数:
- 44,897人(連結)、21,727人(単体)
- 事業内容:
- 運輸業/流通業/不動産業/その他
- URL :
- https://www.westjr.co.jp/
1987年4月の国鉄分割民営化に伴い、本州の西半分と九州北部の2府16県を営業エリアとして発足した旅客鉄道会社。51線区/約4,900kmに上る鉄道事業に加え、流通業や不動産業なども営んでおり、2024年3月期の営業収益は1兆6,350億円に達している。2023年度には未来社会にグループ全体で目指す姿として「私たちの志」を掲げ、長期ビジョンや中期経営計画を策定。グループ一体となった価値創造や変化対応、創出力の向上に取り組んでいる。
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