導入事例

Power Platform(Power Apps)
導入事例

伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 様

2000時間以上の業務削減を実現するPower Platform導入事例
“当たり前”を変えるDXへの第一歩を支えた実績と対応力

課題

  • 書類保管・管理コストの負担増加
  • 感染症拡大の影響による在宅勤務体制への適応
  • アナログ作業によるオペレーションミスリスクへの懸念
  • 電子帳簿保存法に伴う会計書類などのペーパーレス化への促進

効果

  • 年間2000時間強の業務負荷削減(試算上)
  • 書類の電子化・承認フローの自動化促進
  • 場所を問わない業務体制の構築
  • 電子帳簿保存法を加味した帳簿保管体制の構築

プロジェクトの背景・課題

歴史ある業界のDXへの取り組み

伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 IT推進部 営業システムチーム長代行 宮﨑 良太氏
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社
IT推進部 営業システムチーム長代行
宮﨑 良太氏

2001年、総合商社の鉄鋼製品部門の「分社型共同新設分割」という形で誕生した伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社。創業以来、鉄鋼製品などの輸出入や販売をはじめ、関連する各事業を推進している。

その中で、会社全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を担うのが、IT推進部だ。「当社は2021年度からCDOも新たに設置しました。ペーパーレス、ローコード対応、自動化・RPA化、社員へのIT教育などといった柱でDX推進を急いでいます。」と、IT推進部 営業システムチーム長代行の宮﨑良太氏は語る。

伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 経理部 部長代行(兼)営業経理第二チーム長 鍵冨 善宏氏
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社
経理部 部長代行(兼)営業経理第二チーム長
鍵冨 善宏氏

鉄鋼業界の歴史は長く、デジタル化の取り組みが進んでいない企業も多い。「DXを推進する中で、まず取り組みたいのはペーパーレス化です。業界全体として、紙文化からなかなか抜け出せない状況です。50年100年と続く業界であり、慣れたやり方から変えることには大きな抵抗があります。」と語るのは、今回のプロジェクトの中心部門である経理部にて部長代行(兼)営業経理第二チーム長を務める鍵冨善宏氏。

「鉄鋼業界の明細は細かく、1回の請求書で50枚以上の紙を使うことも珍しくありません。紙やアナログ作業では保管や回付に伴う多くのコストや業務負荷がかかります。」と長年“当たり前の慣習”の中に存在してきた堅実な業務のやり方が、技術革新や働き方改革が進んできた現代では改善すべき課題になってきている点を指摘する。

在宅勤務への切り替えで業務負荷が増加

大量の紙を使う請求書の対応業務をしていた中、さらに業務負荷への追い打ちをかけたのが、感染症拡大の影響による在宅勤務への切り替えだ。それまでの請求書の処理対応方法は、営業事務担当が取引先から届いた請求書と基幹システムに入力して、紙で出力した支払依頼書をセットにし、上長へ提出。営業部内で承認後、経理部門にて承認・支払い対応を行う流れであった。

導入前のイメージと課題

導入前のイメージと課題図

在宅勤務への切り替え時に、支払い遅延防止のためにメールや共有フォルダー、オンラインツールなども活用した回付フロー導入も合わせて始めた。同社のBCPとしての対応ももちろんだが、同時に取引先の働く環境も大きく変化しており、柔軟な対応をする必要があったためだ。一方、メールなどで回付して承認してもらうことを良しとしても、承認と保存の機能を併せ持つシステムがなかったこともあって、承認印の捺印や原本の保存を継続しなければいけない状況は変わっていなかった。また、紙申請や承認・捺印作業のため、折を見て出社せざるを得ない状態も続いていた。

「在宅勤務という制限された環境下で、元来のアナログでの事務作業にさらなる業務負荷がかかり、限界を感じました。いつ誰が出社するか連絡を取り合いながら業務を行わない限りは、承認状況のステータスもブラックボックス化し、営業担当からの承認申請メールや回付された書類に承認者が気づかない可能性もあるでしょう。これでは多重払いや支払い遅延といったリスクも出てきてしまいます。一連の承認フローをデジタル化することでこういったリスクを防ぎ、業務を効率化していきたいという狙いのもと、プロジェクトが発足しました。」と鍵冨氏は語る。

伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 経理部 決算管理チーム 山田 遼氏
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社
経理部 決算管理チーム
山田 遼氏

「さらに、2022年に改正されることとなった電子帳簿保存法への対応も、この機に行う必要が生じました。」と語るのは、経理部 決算管理チームの山田遼氏。デジタル対応が実現できれば原紙保管が必要なくなる。ただし、デジタルで書類を保存する上で、2022年に改正される電子帳簿保存法への対応が必要となる。請求書処理のワークフローをデジタルに置き換えるためには、さまざまな観点から検討すべき事項があった。

こうして、経理部から8名、IT推進部から3名、経営企画部から3名の総勢14名のプロジェクトがスタートした。

製品やベンダー選定の決め手

製品選定のポイントは、将来展望も見えたこと

今回のプロジェクトで実現したい要望として、まずは以下の2点に焦点が絞ぼられた。

  1. 承認フロー全体の可視化とアラート通知により多重払い・支払い遅延リスクを抑制
  2. 場所を問わずにデジタルで申請/承認が行えることによる業務効率化・コスト抑制

そして、上記2点を実現した上で、電子帳簿保存法に対応可能な製品を選ぶ必要があった。その中で選ばれたのが、Microsoft Power Platformだ。

Power Platformは、Microsoft社が提供するローコードツールだ。簡単なシステムであれば、現場社員でもソースコードを書くことなく構築可能。Power Apps、Power Automate、Power BI、Power Virtual Agentsの4つの製品があり、中でもPower AutomateはRPA機能も搭載しており、あらゆる業務を自動化することができる。

「今回の要件を満たせそうなクラウド製品をいくつか実際に触って試してみて、使い勝手やコスト、品質などの観点で検討しました。その中でも、Microsoft Power Platformは柔軟性や今後の拡張性などの観点でも面白そうだなと感じました。IT部門以外でもソースコードを書かずにシステム構築できるので、ゆくゆくは社員それぞれが自分たちで業務効率化をしていくこともできるでしょう。また、当社はMicrosoft 365も導入していますので、Azure ADやMicrosoft 365と連携できる点でも優位性があると考えました。」と宮﨑氏は語る。近年DXに向けて意識を高めていた同社では、将来的な展望も見据えて選定を行った。

ベンダー選定のポイントは、実績と対応力

「Power Platformの開発支援サービスを持つベンダー複数社にお声がけしました。その中でもシーイーシーは、TeamsやOutlookなどMicrosoft 365との連携を意識した提案が印象的で、今回の要件に対して説得力があると思いました。Microsoft 365だけではなくDynamics 365やDataverseへの造詣も深く、Microsoft製品の導入実績が豊富にありました。実績に即した提案内容でしたので、納得度も高かったです。」と、宮﨑氏はIT推進部の立場からベンダー選定のポイントを語る。

さらに山田氏は、経理部の観点から「電子帳簿保存法に適応するための要望に対して柔軟に提案・対応いただけたことも助かりました。シーイーシー社内でも不明な点が出てきた際はMicrosoft社へ掛け合ってくれ、安心してお任せできる印象を持ちました。」と語る。

導入効果

業務負荷やリスク防止運用など期待以上の効果

導入後は下記のようなイメージだ(予定含む)。

導入後のシステムイメージ(予定含む)

導入後のシステムイメージ(予定含む)

営業担当の手元にお客様からの請求書が届いたら、Power Appsへアップロードする。同時に、従来どおり同社の基幹システムで支払依頼書を登録。その後、営業部内での承認を経て経理部にて承認・検証作業に入る。各承認者へ通知が送られ、Power Apps上で承認作業を行う。経理部内で最終検証が完了したら、支払担当者への通知とデータベースへのデータ登録が自動で行われる。

全体フローの進捗はPower Apps上で確認可能だ。未承認ステータスの一覧も出せるので、抜け漏れなどのリスクを抑えることができる。さらに、Power Automateにより、作業やフローが自動で流れるようになる。

削減されるものや業務負荷としては、主に下記の6つが挙げられる。

  • ・回覧に必要な紙の文書
  • ・重複する申請や記入作業
  • ・紙の管理、仕分け、整理
  • ・紙を運ぶ人手と時間
  • ・経理部門の目視確認や手作業
  • ・申請・承認のための出社

2021年8月からトライアル運用を開始した。トライアルしている営業部からは以下のような喜びの声が上がっているようだ。

  • ・承認フロー全体が可視化されていて、安心感がある
  • ・未承認明細にアラート通知機能があり、漏れがない
  • ・モバイルやタブレットからもアクセスでき、在宅でも業務がはかどる

取材時(2021年12月)の試算では、年間2000時間以上相当の業務負荷が削減できる見込みだ。漏れやダブリがないかなどを心配する心理的負荷を考えると、さらに効果があるだろう。取材時ではPower Appsの導入トライアル中であったが、今後はPower Automateを使ってRPAもフロー内に組み込み、手作業・目視作業などアナログ業務は自動化される。業務にかかる時間はさらに削減されていく予定だ。

効果の裏にある紙文化ならではの苦労や評判

喜びの声の裏には、プロジェクトメンバーの苦労した点も多い。業界的にも紙で慣れ親しんだ方が多く、パラダイムシフト的変化だ。そのため、一気に全員が抵抗なく切り替えることは難しい。

例えば細かい点で言えば、「書類が多い場合ホチキス留めされているため、いちいちホチキスを外してスキャンしなければならない手間を考えると現状のやり方の方が楽だ」という声もある。

また、部署や商流、拠点や年齢層などによって変化への柔軟性やニーズが異なる。一般的に言えることだが、今までのやり方を変えることに抵抗感を覚える人もいるだろう。新しいやり方を導入し定着させる上で苦労する点は多い。

また、電子帳簿保存法への対応にも一苦労があったようだ。プロジェクト中に法律要件が明確になってきたことから、開発の要望をあとから変える必要がでてきてしまい、整理に時間を要した。

一方で、一部の部署ではクラウドストレージやエクセルによるワークフローを組むなど、デジタル化への動きを先んじて取っていた。一度デジタルの利便性を経験した部署では、今回のトライアルはかなり好評な様子だ。

「トライアルでよい印象を持ってもらうことで、よい口コミが広がりました。全国の支社へ説明周りをするときにも、こうした声は説得材料になります。」と全社導入に向けて最終準備を進める鍵冨氏は、トライアルで得た成果をポジティブに受け止めている。

プロジェクト中のシーイーシーへの評価

「今回、アジャイル的にプロジェクトを進めていただき、とてもやりやすかったです。」と全員一致でシーイーシーを評価している。中でも宮﨑氏は、「要件定義の段階から実際に動く画面を見ることでイメージが湧きました。画面を見ながらインタラクティブに要望をお伝えすることで、“小さく始める”形となり、全体を通してスムーズに進むことができた印象です。他社実績もあったので安心してお任せできました。」と評価する。

「ライセンス、機能面の説明やマニュアルの提供、構築後のサポート、要望変化への対応などまで、フルでご対応いただいています。」と満足されているようだ。

山田氏からは、「電子帳簿保存法への対応は、本当に助かりました。Microsoft社との調整を始め、あとから確立されてくる法律要件に対応するための仕様変更も行っていただきました。」とシーイーシーの対応力を評価する声が聞かれた。

シーイーシーでは、システムの導入に対して“小さくはじめて大きく育てる”姿勢を大切にしている。システムを導入しても定着しなければ意味がないので、現場に定着し、使ってもらいやすいシステム導入を実現するため、さまざまな観点からのご提案・ご要望の汲み取りなどに力を入れている。こうした姿勢が対応力へとつながり、高い評価をいただいた。

今後の展開

「まずは、2022年1月の本格運用がうまく走り出すことを重視しています。変化に抵抗がある方や、紙の方が楽だと思われている方も一定数いるので、納得できるだけの充分な効果を示しつつ丁寧な説明をすることが重要だと思います」と鍵冨氏は導入・定着成功に向けて語る。

また、宮﨑氏からは「Power Appsにおける基本の構築が完了し、次はPower Automateで自動化・RPA化を進めていきたいと思っています。現在使っている基幹システム上の情報もロボットで読み取り、データ照合などまでできるようにすることも想定しています。」とより業務負担を軽減していく方針だ。

Power Platformはベンダーによる開発支援も行っているが、本来はプログラミングスキルを持たない現場の社員でも開発できる製品。気軽に使うことができ、エラーがあればすぐに直せる。見た目や操作性もMicrosoft製品と統一感があり、慣れやすいだろう。

「Power Automate Desktopは各個人PCにも搭載されます。まだまだDXの道のりは長いですが、今後社内のIT教育を進める中で、各個人がRPAを構築して自分の業務まで効率化していけるようになったら理想ですね。」と宮﨑氏は同社内でのDXへの観点も忘れず大切にしている。

歴史ある業界でこれまで“当たり前”であった慣習を変える苦労は大きいが、同社のDX展開がますます楽しみだ。

伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 様
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社

代表者 :
塔下 辰彦
設 立 :
2001年10月1日
資本金:
300 億円
事業内容:
鉄鋼製品などの輸出入および販売、加工、サプライチェーンマネジメント、鉄鋼関連業界への投資
URL :
https://www.benichu.com/
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社

2001年10月に総合商社の鉄鋼製品部門の「分社型共同新設分割」という形で誕生。総合商社の総合力を最大限に活用しつつ、取引・事業における付加価値・サービスの質的向上を図り、お取引先のご要望に幅広く対応してきた。
2021年には新たな第7次中期経営計画を策定し、「MISI as Resilient towards 2023」というスローガンの下、「備える~収益基盤再強化」「高める~競争優位性構築」「鍛える~人的資源底上げ」という3つの重点施策に取り組み、新たな時代に勝ち残れる収益力とコスト競争力の実現を目指している。

※製品名・企業名・役職名など、記載の情報は取材時のもので、閲覧時には変更されている可能性があります。

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